,

相続放棄という選択

自然人が死亡し、相続が開始した時、相続人が取りうる選択肢としては、
①単純承認をする(相続人の権利義務を無限に承継する)
②限定承認をする(相続によって得た財産の限度においてのみ被相続人の債務及び遺贈を弁済するという留保付きで相続を承認する)
③相続放棄をする(その相続に関して初めから相続人とならなかったものとみなす効果を発生させる)
この3つがあります。

今回は③の相続放棄についてお話しします。
「相続放棄をした」と言う方に、家庭裁判所に相続放棄する旨を申述したのか聞いたところ、それはしていない、と言う方が時々おられますが、
それでは相続放棄の効果が発生したとは言えません。

民法983条は、「相続の放棄をしようとする者は、その旨を家庭裁判所に申述しなければならない。」と規定しています。
すなわち、有効に相続放棄をするためには、家庭裁判所を使った手続きが必要となります。

また、相続放棄をするには期間制限があります。
民法915条本文は、「相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。」と規定しています。
つまり、相続人は、相続開始の原因となった事実と、その結果として自分が相続人となったという法律上の事実を知ってから3か月以内に相続放棄をしなければなりません。この3か月の期間を熟慮期間といいます。
なお、3か月以内に相続放棄をしなかった場合でも、一定の条件を満たせば熟慮期間の起算点の繰り下げが認められることがあります。

自分が相続人となったという事実は様々な方法で知ることになります。
自分よりも相続の順位が上の相続人が相続放棄をした、という通知を受けて初めて知ることもあります。
突然そのような通知を受けて驚くかもしれませんが、知ってしまった時から熟慮期間のカウントは始まってしまいますので、早めの対応が必要です。

また、相続放棄をする理由も様々です。
プラスの財産よりもマイナスの財産のほうが多いから、という理由が多いように思いますが、ほかにも、遺産が少なくて相続する手続きのほうが面倒だから、とか、遺産分割に関して相続人が揉めておりこれ以上関わりたくないから等の理由もあります。

いずれにせよ、相続放棄をするかどうかにあたって、被相続人の財産関係を把握することが必要になります。
財産と言っても、不動産、預貯金、株式、自動車など多岐にわたります。
また、債務があると思われる場合には、銀行やクレジットカード、固定資産税などの税金の滞納がないかどうかも調べなくてはなりません。
3か月の熟慮期間は、あっという間に過ぎていきます。

このように、相続放棄をすると言っても短い期間で様々な調査をし、検討をする必要があります。
そのため、相続放棄の選択肢が浮かんだ場合には、早めに弁護士に相談されることをお勧めします。

弁護士 富岡杏奈