AI時代の本人による労働審判の是非

昨日のX(旧Twitter)において、AIによる本人訴訟が激増しているという話題が出てきました。その中で、とある地方では、現時点で今年の労働審判は前年比5倍増との情報も出てきています。この情報の裏はとれておらず、あくまで噂レベルとして現段階では理解すべきでしょう。

もっとも、私の実際の体感としても、相手方本人から、AIで生成したと思われる、長文の文章が記載された主張書面が出てくることが増えてきたと感じております。今後も、AIを活用した本人訴訟や調停は増加していくことが予想されます。

私個人としては、少額の案件について、AIを使って本人訴訟や調停を行うことは、否定されるべきではないと思っています。弁護士費用に対して、採算割れをしてしまうことから、権利を守ることを躊躇せざるを得なかった案件というのは確実にあるからです。

しかし、労働審判に限って言えば、AIの力を借りたとしても、弁護士を付けず、本人だけで遂行するのは全くおすすめできません。
労働審判は、3期日以内に終わらなければならないという制限があり、基本的には、第1回目の期日で、双方の主張を出し尽くさなければならないことから、労働審判の申立ての際に主張の抜け漏れがあってはいけません。第1回目の期日から、労働委員会による心証開示(どちらが有利であると言ったようなお話)があることも多いですが、第1回目で不利な心証を示され、そこからはじめて弁護士に依頼しようとしても、状況を覆すことは困難になってしまいます。
また、労働審判は、その場で審尋をする(質疑応答のようなものです。)ため、即座に対応しなければならないことが多く、AIに頼れない場面も多く存在します。
したがって、リカバリーが利きにくく、AIに頼れる範囲に限りがある労働審判においては、専門知識を有していることは極めて重要であり、弁護士に依頼する必要性は高いものといえます。

したがって、私個人としては、労働審判の申立てを検討するのであれば、すぐに弁護士に依頼すべきであると考えています。

弁護士 川上弘達